実践経営情報

2025.2.24
中小企業の57.7%で正社員が不足出 運送業、建設業では人手不足感が顕著に

 日本政策金融公庫はこのほど「中小企業の雇用・賃金に関する調査」結果を公表した。これによると、2024年12月時点で正社員が「不足」と回答した企業の割合は57.7%で、前年の調査より1.1%低下したことが分かった。業種別では、運送業(除水運)が75.5%でトップ。物流の2024年問題が社会的にも大きくクローズアップされたが、意外にも前年の数字(80.4%)を大きく下回った。以後、建設業(73.7%)、宿泊・飲食サービス業(71.8%)と続く。
 一方で非正規社員の過不足感をみると、「不足」と回答した企業の割合は33.4%だった。業種別では、宿泊・飲食サービス業(64.2%)がトップで、運送業(除水運、47.4%)、小売業(46.2%)と続いている。次に、前年12月に比べて正社員が加した企業の割合を見ると、「増加」と回答した企業の割合は23.6%だった。「変わらない」は51.8%、「減少」は24.7%。業種別に見ると、「増加」の割合が高かったのは情報通信業(33.6%)、宿泊・飲食サービス業(29.7%)、運送業(除水運、28.3%)など。
 また、正社員を増加させた理由については、「将来の人手不足への備え」が56.9%で最も多く、「受注・販売が増加」が38.5%、「受注・販売が増加見込み」が35.5%だった。一方、正社員が減少した理由は「転職者の補充人員を募集したが採用できず」が54.9%。中小企業の採用環境は依然として厳しい状況にあることが顕著に表れている。

2025.2.17
令和7年度税制改正法案が国会提出 所得税の基礎控除引き上げなどが目玉

 令和7年度税制改正法案(所得税法等の一部を改正する法律案)が2月4日に閣議決定され、国会に提出された。
 今回の税制改正法案には、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応として、所得税の基礎控除の額を最大48万円から最大58万円に10万円引上げることや、 給与所得控除の最低保障額を55万円から65万円に10万円引上げることなどが盛り込まれており、これらは令和7年分の所得税から適用される予定だ。
 法人課税では、成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し地域経済に好循環を生み出すため、中小企業経営強化税制の対象資産に建物が追加される(売上高100億円超を目指す中小企業が対象)。また、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置として、令和8年4月1日以後に開始する事業年度について、法人税額から500万円を控除した額を課税標準とする税率4%の新たな付加税が創設される。
 消費課税では、外国人旅行者向け免税制度について、不正排除等の観点から、販売時に消費税を徴収し、事後的に消費税相当額を返金するリファンド方式に見直すことなどが盛り込まれている。
 施行日は令和7年4月1日の予定で、政府が公表した「法律案の概要」では、改正を通じて『「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を実現し、経済社会の構造変化等に対応する』としている

2025.2.10
国外財産は6兆4,897億円で過去最高 国外財産調書の提出件数は13,243件

 国外財産調書とは、その年の12月31日時点で個人が所有する国外財産の合計額が 5,000万円を超える場合、翌年6月30日までに国外財産の種類、価額等を記載して税務署長に提出する法定調書。「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」、いわゆる「国外送金法」において、国が「納税義務者の外国為替その他の対外取引並びに財産及び債務」などを把握する手段の一つとして提出が義務付けられている。
 国税庁はこのほど、令和5年分(令和5年12月31日時点)の国外財産調書の提出状況を公表した。これによると、国外財産調書の総提出件数は13,243件で、総財産額6兆4,897億円。いずれも前年(12,494件、5兆7,222億円)を上回っており、平成26年に制度が創設されて以降、過去最高を記録。株価の上昇や円安の影響によるものと見られている。
 財産の内訳は、有価証券が4兆905億円(構成費63.0%)と圧倒的に多く、以下は預貯金8,479億円(同13.1%)、建物5,064億円(同7.8%)、貸付金1,835億円(同2.8%)、土地1,620億円(同2.5%)と続いている。
 国税庁は「国外財産調書の適正な提出を確保することを通じて国外財産に係る課税の適正化に一層努めていく」としている。

2025.2.03
事業承継税制の役員就任要件 「3年」から「贈与の直前」へ改正

 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予(事業承継税制)を活用するには、後継者が、自社株式を贈与する日まで3年以上に渡って会社の役員である必要がある(いわゆる役員就任要件)。
 ところが、自社株式の贈与にかかる贈与税が100%納税猶予される、いわゆる「特例版事業承継税制」の適用期限は2027年12月31日とされていることから、現行制度下では、2024年12月31日までに後継者が役員に就任していなければ同税制を適用することができない。適用期限が2年以上も先であるにもかかわらず、これから事業承継に取り組む企業では適用を受けられないということだ。この制度は「中小企業の事業承継を促す」ことを目的として創設されたが、このままでは制度本来の目的を果たすことができないため、令和7年度税制改正ではこの役員就任要件が大きく緩和されることになった。具体的には、後継者が「贈与の日まで引き続き3年以上役員等であること」とされている要件が、「贈与の直前において役員等であること」に見直される。
 今回の改正により多くの企業が同税制を活用することが期待されるが、その適用を受けるには、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた旨を記載した「特例承継計画」を作成し、2026年3月31日までに、会社の主たる事務所が所在する都道府県まで提出する必要がある。こちらは間もなく提出期限の1年前を迎えるため、事業承継を考えている企業は早めに動き出す必要がある。

2025.1.27
外国人旅行者向け消費税免税制度 出国時に返金する「リファンド方式」へ

 外国人旅行者が、いわゆる免税店で土産品等を購入した場合に、その消費税が免除される「外国人旅行者向け消費税免税制度」。この制度は、土産品等を国外へ持ち帰ることは、実質的に輸出と同じであることから設けられている制度だ。
 近年、訪日外国人の増加に伴い、この免税制度を不正利用するケースが相次いでいる。金地金や高額なブランドバックなどを免税で購入し、それを国内で「税込価格」で販売すると、消費税相当分がそのまま利益になってしまうためだ。このように免税店で購入した商品を国外に持ち出さない場合、通常は税関で消費税が徴収されることがルールとされている。ところが、会計検査院は令和5年度決算報告の中で、令和4年度に合計9名、総額34億円の消費税が税関で徴収されていなかったことを指摘しており、不正利用を防止するための制度改正が急がれていた。そこで今回の改正では、商品販売時に消費税を免税とするのではなく、出国時に持ち出しが確認された場合にのみ消費税を返金する「リファンド方式」へと見直されることとされた。本改正に伴って、免税購入対象者は、購入した免税対象物品について、出国時にパスポートを提示して税関長の確認を受けることとされ、確認を受けた免税対象物品は必ず国外に持ち出すことなどが義務付けられる。
 不正防止に大きく貢献することが期待される一方、旺盛なインバウンド需要に水を差す形にならないか懸念される。

2025.1.20
法人税率の中小特例が見直し 年間所得10億円超は「税率17%」に

 令和7年度税制改正では、「中小企業に対する法人税の軽減税率」が大きく見直されることになった。
 現在、資本金1億円以下の中小企業の法人税率は、年800万円以下の所得⾦額について本則19%とされており、令和7年3⽉31⽇までの時限的な措置として、さらに15%に軽減されている(中小企業に対する法人税の軽減税率=租税特別措置)。今回の改正では、この租税特別措置部分の対象から「所得金額が年10億円を超える事業年度」が除外される。つまり、所得金額が年10億円を超える事業年度については、今後、年800万円以下の所得⾦額について、15%ではなく17%の税率で法人税が課されることになる。
 わが国では、世界的な法人税率の引下げ競争が展開される中、2010年代に、設備投資や雇用・賃上げの促進、立地競争力の強化を図るため、法人税率が23.2%まで引き下げられた。しかし政府は「法人税率が設備投資や賃金に与える影響は限定的」「わが国の法人税改革が国内投資の増加に効果的でなかった」と明言するなど、法人税改革が失敗に終わったことを認めており、法人税については本格的な“上げトレンド”に入っている。実際、今回の税制改正大綱にも「法人税率を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施するなど、メリハリのある法人税体系を構築していく」と記載されているため、今後の動向には注視が必要だ。

2025.1.13
令和7年度税制改正大綱が公表 基礎控除は「10万円引き上げ」

 自民・公明両党は12月20日、令和7年度の税制改正大綱を取りまとめ、同日午後に閣議決定された。
 今回の目玉は、直前まで“大揉め”となった「103万円の壁」の解消について。所得税の基礎控除額が10万円引き上げられるほか、給与所得控除の最低保障額が、現行の55万円から65万円まで引き上げられる。また、新たな控除の仕組みとして「特定親族特別控除(仮称)」が導入される。これは、19歳から22歳までの大学生年代の子の合計所得金額が85万円(給与収入150万円に相当)までは、親が特定扶養控除と同額(63万円)の所得控除を受けられ、合計所得金額が85万円を超えた場合でも、親が受けられる控除の額が段階的に逓減するというもの。特に飲食業、小売業、サービス業などでは、パートやアルバイトの人手不足が深刻化していることから、大学生アルバイトによる収入調整を抑制することが狙いだ。
 基礎控除が全ての納税者に対して恩恵がある一方、給与所得控除の「10万円引き上げ」は、給与収入が1,625,000円未満の人にしか適用されない。つまり、一般的なサラリーマンには適用されず、実質的には基礎控除が10万円増えただけ。「物価高騰に苦しむ国民の手取りを増やす」と盛り上がったものの、政府・与党の抵抗もあり、減税という意味では少し物足りない改正となった。ただし、自民党、公明党、国民民主党による三党協議が引き続き行われる予定であり、最終的にどのような制度になるか注視しておく必要がある。

2025.1.6
暗号資産取引に対する課税 分離課税の“対象入り”は暗礁に!?

 暗号資産の譲渡による所得は、現行制度では原則として雑所得に該当し、他の金融商品が20%の申告分離課税の対象となる一方、暗号資産取引は申告分離課税の対象から除外されている。こうした課税方法について、暗号資産交換業者等の業界団体である日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)や日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)では、以前より「20%の申告分離課税の対象とすること」「損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができること」などを要望してきた(暗号資産デリバティブ取引も含む)。
 こうした業界団体による活発な動きを受けて、令和6年度税制改正では、発行者以外の第三者が継続保有する暗号資産について、一定の要件の下、期末時価評価課税の対象外とする見直しが行われたばかり。こうした流れもあり、いよいよ本丸である「申告分離課税の対象入りが実現するか」と話題になっていたが、石破総理は12月3日に行われた代表質問の中で「投資家保護規制が整備されている株式や投資信託のように暗号資産への投資を国が推奨することが妥当なのか、申告分離課税を適用することに国民の理解が得られるのか、などの課題があり、丁寧な検討が必要である」と答弁し、慎重な姿勢を示している。
 令和7年度税制改正で申告分離課税の対象となる道はほぼ途絶えたと言える状況だが、引き続き動向を見守りたい。